海外で、世界で、ビジネスで、いろいろ経験してみます

ホーチミンの名物男と呼ばれた筆者が、世界をいじる

輸出ビジネスで英語ができないとダメですか?

公的機関で貿易相談に応じているとよく聞かれるのがこの質問です。

「輸出ビジネスを始めたいのですが、やはり英語ができないとダメでしょうか?」

 

「できないよりはできた方がいいですが、今はウェブでレベルの高い翻訳ツールがいろいろありますから、文章のやり取りはそれを使ってコミュニケーションをとったらどうですか?」

と答えています。

試しに機械翻訳ツールで定評のあるDeepL(ディープエル)を使って、ちょっと専門的な日本語を英語(US)にしてみます。サイト https://www.deepl.com/translator 

 

例文

2024年の年明けには、「明けの明星」金星が鋭い輝きを放っています。1月は西方最大離角となる水星と合わせて、内惑星が日の出前の空に揃います。春を迎えるころには夜明けの金星は見るのが難しくなります。一方、日の入り後の空では、明るい木星が春の盛りまで目を引くでしょう。

出典:国立天文台 ほしぞら情報2024 展望 より引用

 

→ DeepLを使って英語(US)に翻訳してみます。

Venus, the "brightest star of the dawn," will be shining sharply at the beginning of the year 2024, and in January, the inner planets will align in the pre-sunrise sky with Mercury, which will be at its maximum separation in the west. By the time spring arrives, Venus at dawn will be difficult to see. Meanwhile, in the sky after sunset, bright Jupiter will catch the eye until the height of spring.

 

Translated with DeepL.com (free version)

 

やや直訳のような印象もありますが、十分通じる英語になっています。

で、翻訳されたこの英語を再び日本語にするとどうなるか?

いたずら半分でこの英語をDeepLで日本語に翻訳してみました。

 

明けの明星」である金星は、2024年の年明けには鋭く輝き、1月には内惑星が日の出前の空で、西で最大に離れる水星と一直線に並ぶ。春が来る頃には、夜明けの金星は見えにくくなるだろう。一方、日没後の空では、春の盛りまで明るい木星が目を引くだろう。

 

表現は固い部分があるものの意味は通じます。

 

ということで、冒頭の質問

「輸出ビジネスを始めたいのですが、やはり英語ができないとダメでしょうか?」

については、

「読み書きの文書主体でビジネスをする範囲では、翻訳ツールを使えばほぼ問題なくできるでしょう」

ということになりそうです。

 

しかし、

・翻訳した文章の内容が適切か否か

はある程度の英語力がないと判断しきれません。

対策としては、

・翻訳した英語あるいは日本語を、再度日本語あるいは英語に翻訳してみる

ことで元の文章と比較することができます。そこで違和感がなければ合格、ということにすればよいと考えます。もし違和感を感じたならば、知り合いの英語ができる人やフリーランスの人にお金を払って手伝ってもらう、ことをすれば良いでしょう。

 

よし!これで日本のxxを海外に売れるぞ!

 

ちょっと意気込みに水を差すようで申し訳ありませんが、

・儲かるかどうかの計算は済ませましたか?

・税金のことも勉強しましたか?(実は仕入れ消費税が還付される・・・かも)

・輸出と輸入でよく使われる専門用語をご存じですか?

・海外向けですから簡単過ぎる梱包は頂けませんね

・お金は日本円で入金しますか、ドルですか、それとも他の通貨ですか?

・輸送中の事故に備えた保険も掛けましょう

・海外の注文者からお金が払われないリスクをどうやって減らしますか?

など、もう少し勉強しないと危ない(赤字になる)ことがあります。

 

一方で、

・輸出の代金回収は原則として日本を発する日の前後に行われることが多いので、資金繰り面で国内商売より有利(海外には月末締めの翌月末払いという商習慣はない)

・輸出した品物を購入した時の消費税10%(8%のものもある)が還付される(課税事業者であること、支払った消費税額が受け取った消費税額より多いこと、など条件あり)

というようなキャッシュフロー上のメリットもあります。

 

輸出ビジネスを始めるのに英語が必須という時代ではありません。翻訳ツールを使えば文章の意思疎通の範囲ではコミュニケーションがとれそうです。

しかし英語以外に知らねばならないこと、たとえば会計や税の知識、輸出や輸入で使われる専門用語、売り上げたお金の回収、といったことをつぶさないと利益が出ません。利益が出ないとビジネスは続きません。

英語を含め、輸出ビジネス(輸入ビジネスも)を手掛けるのにはこうしたことを押さえておきましょう、ということをつらつら書いて行きます。

*筆者は日本政策金融公庫が発行した輸出ノートの原稿作成を手掛けました。ジェトロの2023年度貿易実務オンライン講座の応用編テキストやスライドの校正を担当するなど、このテーマの実績十分です。

ジェトロの貿易実務オンライン講座はこちら https://www.jetro.go.jp/elearning/ 

 

次回からはトピックスも含めてあれこれ書いて行きます。

 

ほいじゃー